1.IMOCは国際海洋気象という気象予報の会社です。
 ここで出されている波浪予想図は国際海洋気象が独自に作っているものではありません。 これは気象庁のスーパーコンピューターが製作しているGPV予想を加工しているものです。
 GPVとは日本語に直すと格子点値という意味です。
 具体的にGPV予想とはどのようなものかというと、スーパーコンピューターを用い、何kmかの間隔で気象要素を予想しているものです。IMOCには波浪予想だけがのっていますが、他にも天気(晴れ、くもり、雨、雪)、気温(3時間毎、最高気温、最低気温)、風(風向、風速)がGPV予想として発表されています。テレビなどで3時間毎の天気の移り変わりとして、地図上で晴れならオレンジ色、くもりならグレーとして見せているものがGPV予想です。
 IMOCでは何色かに分けて50cmまたは1m毎に波の高さを表していますが、実際には、波高は10cm単位で発表されています。また、IMOCでは波高と波向しかのせていませんが、ほかにも周期が発表されています(ここがポイントです)。
 具体的には、海上のあるポイントAでは波高1.6m、波向東、周期7秒、ポイントAから10km東にいったポイントBでは波高1.5m、波向東、周期6秒、ポイントAから10km北にいったポイントCでは波高1.5m、波向東、周期7秒、ポイントAから10km南にいったポイントDでは波高1.5m、波向東、周期6秒、といった様に海上に格子状に点をとって先ほどの要素を予想しています。(つまりIMOCは気象庁のスーパーコンピューターが予想した波高を、ある程度に区切って色分けしているだけです。)
 一般の人でもこのGPV予想(IMOCより、さらに細かいもの)は機械とお金さえあれば手に入れられます。(現実には個人の趣味のレベルでは無理ですが)

 

 

2.IMOCの弱点
 波を表現するときサーファーならサイズ、向き、セット間隔などで表現します。
 理科的に波を表現するときは以下の要素をもちいます。

波高(H):波の峰と谷の距離
周期(T):ある一点を波の峰が連続して通過する時間間隔
波長(L):隣り合った波の峰と峰との水平距離
周波数(f):周期の逆数、f=1/T 振幅(A):静止水面から峰までの鉛直距離。A=H/2
波速(C):波形が水面を進む速度。C=L/T
波形勾配(S):波形の険しさを示す量。S=H/L
群速度(Cg):波エネルギーの伝播速度 Cg=1/2C

 IMOCではこの要素のうち波高しか表現していません。つまりIMOCは波情報としては非常に不完全な情報だといううことです。
 では、情報として何が必要になってくるかというと、周期が必要になってきます。
 周期Tの値がわかると近似的に波速Cと波長Lがわかります。 (C=1.56T、L=1.56T×T)
 現在、気象庁から発表されている、波浪実況図、波浪予想図、およびGPV予想には、波高、波向、周期の3要素が表現されています。

 

 

3.波
 波と言いますが、音も波ですし、光、電波も波です。海上の波に限定しても重力波、潮汐、津波、高潮などがあります。
 私達が一般に波と言ってるものは、風によっておこり、風に支配されている周期約1秒〜30秒の波浪のことを言います。そしてこの波浪とは風浪とうねりの総称です。
 風浪はその水面で吹く風により起こされた波のことを言います。サーファーに解かり易く言うと、グチャグチャの風波といったところです。
 この風浪により荒れた水面は重力等の動きで元に戻ろうとする運動を起こします。この運動は波動となって周辺に伝えられます。これを波の伝播現象と言います。この伝播の過程にある波がうねりです。これをサーファーに解かり易く言うと、オンショアグチャグチャの波だったけど、風が止んでまとまってきた波といったところです。
 波の形で見ると、風浪は峰が尖り、不規則な形、うねりは峰が丸味を帯びて規則的な形になっています。
 うねりの代表的なものがいわゆる「土用の波」です。土用の波とは、夏の時期、その土地では風がなくても遥か南の台風から伝わってくる波のことです。ここでポイントが1つあります。うねりは遠くからでも届くという事です。ハワイの夏のサウスの波は南極からのうねりと言われています。しっかりしたうねりは寿命の長い波と言えます。
 それに対して、風浪は風さえ止めばすぐにサイズは下がっていきます。また遠くまで伝わることもありません。(というよりも風浪が遠くに伝わる際に、サイズが下がりうねりに変わると考えたほうがいいかもしれません。)  私達が船に乗った時などに沖合いで見る波は、このうねりと風浪が混じりあったものです。

 

 

4.有義波
 1つの海面の波浪は、複数の大小さまざまなうねりと風浪が混在しており複雑な形状になっています。(規則的に同じ大きさの波が繰り返されることはない!セットの波とは複数の波の峰が重なり合い、他の波より大きくなったもの。)この複雑な海面波形は「有義波」という統計量で数値化されています。現在気象庁が発表する気象情報は特にことわりがない限り、すべて有義波として発表されています。
 有義波とは「海上の一点を連続通過する100波以上の波のうち、高いほうから1/3個選び、これを平均した波」であり、その波高を有義波高、周期を有義波周期といっています。人間が実際に感ずる平均的な波の高さが有義波とほぼ等しいと言われています。
 また、統計的に次のことがわかっています。
 有義波の大きさを1としたとき
  10波に1波は1.27
  100波に1波は1.61
  1000波に1波は1.94
 の大きさになります。つまり波の高さが1mと発表されていても1000波に1波は2mの波だということです。
 ここで、大事なことが1つあります。NTTやIMOCやNHKなどで伝えられる波の高さは、もちろん有義波高です。この有義波高はうねりと風浪をひっくるめた波の高さだということです!
 胆振・日高の波浪予想が1mのときに厚真は肩、波浪予想が1.5mなのに厚真は膝となる理由はここにあります。

続く予定
唐澤気象予報士のレポート次第です!